杖をついて地下鉄に乗る。
混んでいる時間は迷惑がられる。いつものこと。
舌打ちされたり、悲しい思いをすることが多い。
しばらくすると、珍しく座ることが出来た。
隣には、以前いつお風呂に入ったのかわからないような、
体臭がきつい男性が座っていた。
臭いがきついためか、彼の周囲からは人が少しずつ人が離れていった。
私は、立ったまま地下鉄に乗るのは無理な体調だったので、
臭いは正直気になったけど、隣に座り続けた。
正直、その男性の出で立ちに少し警戒をしていたと思う。
私が降りる駅が来た。
周囲の迷惑にならないように、邪魔にならないように、気をつけながら
降りようと立ち上がると、隣の男性(体臭がきつい方)が、
「だいじょうぶ?」
とてつもなく、やさしい、温かい声で、気遣ってくれた。
ちょっと今の私では再現できないほど、温かいトーンだった。
やさしい言葉がつづく。
「気をつけてかえってね」
心にストレートに響いて、やさしさがじんわりと広がり、
不覚にも地下鉄を降りたら涙が一筋こぼれた。
そのやさしさに、きちんとお礼をいえなかった私。後悔している。
その男性には、会釈をしてから地下鉄を降りたけれど、それが精一杯だった。
あんなにやさしい「だいじょうぶ?」は生まれて初めて聞いた。
お風呂に入っていない出で立ち、体臭がきつい、だとか
そんなことで何となく警戒していた自分を反省。
どのような理由でそうなのか、わからないのにね。
「だいじょうぶ?」ってことば、単純なようで難しい言葉。
あんなに温かいトーンで相手に伝えられる人、すごいな。
心からありがとう。
見知らぬ誰かのやさしさで、元気が自然に沸いてくることってあるんだね。